『1978年のまんが虫』細野不二彦

皆さん、ごきげんよう。現役マンガ編集者の爆進堂です。

 特異なマンガを読みすぎて自分の軸がぶれているなと思った時に、名作マンガを読むと回復します。そんな確かな面白さを提供してくださるマンガ家さんの一人が細野不二彦先生です。

 今日は巨匠・細野不二彦が放つ初の自伝的マンガをご紹介!

タイトル:『1978年のまんが虫』

著者:細野不二彦

出版社:小学館

定価:1480円(税込)

【あらすじ】

時は1978年。東京の私立大学にマンガやSFに夢中になっている学生の中に主人公【細納不二雄】がいた。SFサークルのツテで紹介された「スタジオぬえ」の松崎に「あわよくばマンガ家になりたい」という本心を見抜かれ。そのままマンガ家を目指しつつ「スタジオぬえ」の仕事を受け始める…。

【感想】

 作中では「丘の上大学」とボカされていますが、細野先生は慶応高等部から慶応義塾大学に上がった秀才で、デビューした当時は「慶応卒のマンガ家」として注目を集めていました。

 高等部時代には同級生のSFグループにいた美樹本晴彦(現キャラクターデザイナー)河森正治(現アニメ監督・メカデザイナー)らの凄い才能らとマンガを共同製作します。分業とはいえ100ページもの大作を夏休みで描き上げるというのが熱いですね。

 大学で知己を得た企画制作スタジオ「スタジオぬえ」の松崎氏にマンガ家への夢を言い当てられ、自分の中にプロのマンガ家を目指す事をはっきり自覚するシーンは作品内で最も印象的な見開きで語られています。

 プロとしてデビューしてからも「自分はこれでいいのか?」と自ら問い続けるストイックな姿勢には頭が下がるばかり。

 さらに作中ではリア充に見えた友人の死や晩年を不遇のまま終えた父親の死と、二つの死を通してたった一度しかない人生をマンガに賭ける決意がぐっと伝わります。

 デビューを目指すマンガ家予備生の方に読んでいただきたいマンガでした。

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この記事を書いた人

中小版元にいたりフリーだったりで、四半世紀をマンガ編集者で食っております。
「編集者はクリエイターの良き影のパートナー」がモットー。
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